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無名だった僕らを変えた、あの一本はこうして生まれた  #01
無名だった僕らを変えた、あの一本はこうして生まれた #01
2017/11/20

Fabulous 4 を受賞した3人のディレクター


スタッフ:では、早速ですが HAT 取締役ディレクターで今回の座談会 座長の小田上さん、進行をお願いします。

小田上:みなさん、きょうはお忙しい中、ありがとうございます。
関 根:いえいえ。
塩 田:そう。とりあえず集められた。

小田上:いや、なんか、山口直哉君、アドフェストの Fabulous 4 で、1等賞的な感じになったので。
関 根:おー。
塩 田:すごい、おめでとう。
山 口:ありがとうございます。おかげさまで、グランプリと観客賞の2つをいただきまして…。
関 根:まじで。

小田上:歴代ハットで、アドフェスト受賞者がなんと、3人も。というわけで、これを機に、座談会でもしたら面白いんじゃないかなーと、集まっていただきました。
塩 田:いいですね、たのしみ。
山 口:緊張です。
小田上:ではぼちぼち、はじめますか。
一 同:おねがいします。

 

今回のインタビュー参加者プロフィール

山口 直哉
2012年 東京藝術大学 美術学部卒
2012年 HAT入社
2017年 アドフェスト Fabulous 4 受賞

塩田 悠地
2006年 愛知県立芸術大学・大学院 デザイン科修了
2006年 HAT 入社
2008年 アドフェスト Fabulous 4 受賞
2017年 フリーランス(Tuxedo)

関根 光才
2000年 上智大学 文学部 哲学科卒
2001年 HAT 入社
2005年 アドフェスト Remarkable 5 受賞
2008年 フリーランス(GLASSLOFT)

※ 座長:小田上 洋光 / HAT 取締役ディレクター

 

① VTR『The Dolls with Attitude』上映

小田上:じゃあ、作品を見ようか、まずは。
関 根:これ、テーマは何でしたっけ?

山 口:正式には『多様性の20周年』っていうテーマで。アドフェストが20周年ということで。この3人にみられるの、すごい緊張しますね。

VTR『The Dolls with Attitude』上映

関 根:なるほど。面白かったです。今の人だなって感じですね。テーマがアイドルとか、現代的な、何っつうんですかね、抑圧的な社会みたいな。僕のときぐらいからずっとそうかもしれないんですけど、この Remarkable とか、アドフェストとか、若い人たちってだいぶそのテーマ一色な感じ。

山 口:大体、抑圧されてるじゃないですか。若い人たちは。脚本を書いて、あーっつってやってると、自分の感情とかも入ってきて、わりと自分の話になっちゃう。笑顔、つくり笑いばっかりして、そういうのやめようみたいな。

塩 田:うん、直哉の話だなって思った。直哉っぽい。
山 口:制作の人に、「こじらせてんじゃねえ」って脚本、読んでめっちゃ言われました。
塩 田:脚本を見て?

山 口:そうですね。「もっとポップなのないの?」みたいに言われて。「そんなのできないです。すいません」って、なっちゃいましたね。

塩 田:でもね、今っぽいネタが入ってるから、暗くなりすぎないとこはあったのと、もともと直哉って、ちょっとそういうのを斜めに、シニカルに見てさ、笑ってるみたいなとこあるじゃん? そういう要素は入ってるから、いいなと思ったけど。

 

② まさに多様性のアドフェスト

小田上:さて。さかのぼると関根のときはあれは何年だっけ?
関 根:2005年。 1回目だったんですよね。まだ、FABULOUS 4って名前じゃなく、Remarkable 5 っていう名で。
山 口:へぇー。

関 根:そのときは参加国が5カ国で決まってた。一応、アドフェストから出る最低限の製作費みたいなのがあったんですけど、今でもそれってあるんですか?

小田上:今はないよね。

関 根:国によって貨幣価値が違いすぎて、日本円だと30万円ぐらいだっけ。いろんな国のプロダクションの協会に問い合わせて、やるってなった国だけ集まって、みたいな。それが5枠あったと。

小田上:なるほど。それぞれが国代表だった?
関 根:はい。日本と、中国と、インドと、オーストラリアとタイ。だから面白かったですけど。
塩 田:まさに多様性ですね。
小田上:そうだよね。まだあのころはフィルム制作だけだったよね?
関 根:そうですね。半ばプロデューサーをだます形で、フィルムが良いと思いますよと。
小田上:その後、「おまえら、幾ら使ってるんだ」っつって、怒られたりしてね。
関 根:ほんとです。

 

③ カメラの話、審査の話。

小田上:塩田の時は2008年か、ちょうど 5D が出始めたころ。

塩 田:そのころなんて、5D とはいえ、動画、きれいに撮れるっていうのを分かってるだけの段階だった。けど、そのときは先駆的でいいかとおもい、5Dでやりました。予算面もあるし。

関 根:僕のときから、3年後かぁ。
小田上:今回のこれは何で撮ったの?
山 口:FS7 ですね、ソニーの。
関 根:最近、人気ですよね。

山 口:そうですね。ちなみに今回は選ばれたの全員日本人だったんですよ。各国から応募があったんですけど、選ばれたのは日本人4人で。

塩 田:僕のときは、日本人僕だけでした。
関 根:お、そうなんだ。でも、ごめん、塩田のやつ、覚えてないんだよね。随分、昔だけど。
塩 田:いや、覚えてなくていいですよ。
小田上:俺は覚えてるよ?
塩 田:僕のときは『メイド・イン・アジア』っていうテーマで臓器移植の。
関 根:ああ、思い出した。みんなダークっすね。

塩 田:そのときは完全に個人応募だったので、勝手に脚本書いて、1個下の制作に英語ができる子がいたので、その子に全部訳してもらって、勝手に出したんですよ。

関 根:じゃあ、脚本がアドフェストに直接行ったんだ。
小田上:そう、そう。誰がそこで審査してるのかな。
山 口:今回はそうでしたけどフィルムクラフト部門の審査員の人が審査してると思うんですよ。脚本も、撮ってきた映像も。
関 根:でも、おれ、フィルムクラフトの審査員やったけど、やんなかったよ、そんな審査。
山 口:ほんとですか?
関 根:何年前だったっけ? 5年ぐらい前?
小田上:いや、数年前の気がしたけど。
塩 田:僕のときはたまたま、岩本さんが審査員だったんですよ。
関 根:そうなの?

 

④ FABULOUS 4 があったから今がある

小田上:塩田の時の裏話なんだけど、岩本さんに聞いたら、ワーッと1回、通して見たりして、何人か残っていくじゃん。そして最終プレビューで投票したときに、最初は1等賞だったのね。でも当時の審査員長が、これは、広告の賞だから、広告的なものじゃないと、映画じゃないから、だって。
そうしたら、発言力あるからワーッとそっちに流れていきそうになったところで、岩本さんが「ふざけんな」って言ったとかいわないとか。

山 口:怒ったんですか。

塩 田:やべえ、菓子折り、送らないと…。でも実はそれ結構、言われました。審査会場でもジャーナリストみたいな人に「きみはCM、向いてないね」、「映画やったほうがいいよ」とか言われて。でもその後、一応名刺代わりみたいになるじゃないですか。だからまったく損したって感じはしてないです。直哉も名刺代わりになるものが出来てよかったよね。

山 口:そうですね。一応、代表作じゃないですけど、1個できたなという感じです。
関 根:直哉君は、これ、1本目なの?
山 口:いや徐々に小さいのとか少しずつやらせてもらってます。

小田上:最近はもう、昔と違って、学生のころから映像学科とか色々あるから、入ってきた時点でみんなある程度はできる。仕事上もそういうニーズが結構あって、本編とか CM にくっ付いてくる、ウェブだったり色々と。だから、練習できる場所が一応ある。

関 根:いいっすね。僕、あれが1本目だったので。僕のときは、社内で AD になってから、普通、5,6年ぐらいたたないと、1本もやれない感じだったので、僕は入ったときにすでに2年ぐらいみんなより年食ってたから。海外留学やらで。
だからやばいなと思って、こっから6年とか時間使ってらんないなと思ってやってたんだけど、1本目だからよく分からなかった。

山 口:みなさんすごいですね。1本目ですもんね。
塩 田:僕のときは全然違った。
小田上:1本目っていうのは何だっけ?

塩 田:JAC で、リマーカブルディレクターのコンペがあるんですけど、JAC がテーマを出して1分くらいの CM をつくるみたいな。
それの1回目につくったのが僕の一本目で、自殺防止キャンペーンの話なんですけど、全然、駄目だったんですよ。ファイナリストにも入らなくて。多分、この感じでやってると駄目だなと思って。
それでアドフェストのほうに、もう勝手に自分で書いて、出して、FABULOUS 4 を取れたという。だから、JAC で駄目で、FABULOUS 4 があったから今があるぐらいの感じです。

小田上:そういう意味じゃ直哉と近いものがあるよね?
山 口:はい。おれもそうですね。何も引っかかないで…。
小田上:3年ぐらい Remarkable 出してて、引っかかんなかった。
山 口:駄目でしたね。でもそれがバネになったとは思います。

⑤ 制作当時の思い出

小田上:じゃあここで、制作当時の思いというか、覚えているようなことがあれば。

山 口:僕はこれを出したとき、4年目だったんですね。それまでコンペものが全部落ちていて、毎年、会長から年賀状が届いて、「グランプリ取ってください」って一言が書いてある。これ、何度もらうんだみたいな、どんどん「うえー」みたいになってきて。

小田上:すごいね、そのプレッシャー。

山 口:すごいんですよ。うわーってなってきて、なんかもう、そろそろ取らなければ駄目だと思って、そんなときにプロデューサーになりたての渡邉雄介さんに、ちょっと出してみようよみたいな感じで誘われて、書き始めた感じですね、きっかけは。でも、もう背水の陣っていうか、これ取れなかったら、いつチャンスが手に入るだろうって感じで、とりあえずもうやれることすべてやりました。ほんとにめちゃくちゃ。めっちゃやりましたね。
書いてるときは、多分、雄介さんと僕って全然、考え方が違って、僕は結構、暗いの大好きだし、怖いの大好きなんですけど、雄介さん、ポップなのがすごい大好きなので、多分、そのバランスがいいところになってたと思います。
去年の Fabulous4 には日本人が3人いて、バングラディシュ人が1人だったんですけど、去年は1人勝ちだったんですよ、見てて。これ、1本だけすごいなみたいな。自分もそうなりたいなと思ったんです。すごいやりきってるっていうか、本気だなって思う作品だったので、やるからにはもう、脚本が選ばれたし、これはもうどうなってもいいやみたいな感じで、これで辞めてもいいというか、それくらいの感じでやりましたって感じです。

塩 田:いや、追い詰められてたんだと思うよ。毎年、その年賀状届いたら、おれ、嫌だもん。
小田上:なるほど。その年賀状作戦に効果があることが分かった。塩田のときはどうだった?

塩 田:みんなそうだと思うんですけど、AD という立場だったからディレクターになるかならないかの唯一のチャンスが FABULOUS 4 で。
関根さんもやってたから、自分も脚本が通れば作らせてもらえるよなって。僕はこれ、通ってつくれなかったら辞めようと思ってたんですよ。
出す時に、前の年が逆に全員日本人だったから、日本人っぽい本を書いちゃ駄目だなと思って、テーマが『メイド・イン・アジア』だったので、臓器売買っていう、ちょっとシニカルな感じで答える切り口が面白いかなと思って、その二つがある時点でイメージが割とできて、それをバーッて。

小田上:なるほど。そういう意味じゃ、本をつくるという以前に、本をつくるための企画みたいなことがあったと?
塩 田:そうですね。

 

⑥ それぞれの狙い、コンセプト

関 根:僕は結構、これで駄目だったら辞めようかなって思っていたので、年齢的にも、時間的にも。もともと日本の広告を面白いと思ってたたちじゃないし、もうちょっとユニバーサルなものをつくりたいなってずっと思ってたんですよね。
僕がこの業界に入ったのは2000年なんですけど、当時は、SHOTS とかまだ VHS で。そういうの見て、びっくりして、ミシェル・ゴンドリーとか、スパイク・ジョーンズとかさ、ジョナサン・グレイザー、ああいう人たちがみんな、ミュージックビデオとか、ショートフィルムとか、広告とか同時にやってたんですよ。
広告ってほんとは面白いんだなって、だけど、日本とつくり方が少し違うし、だったら自分でつくるとか、海外でいろいろやってみて、日本との違いとか、なんで日本で面白いのができないのかを探ってみたかった。

小田上:勝負を懸けるものが見つかった、人生の中で1回のね。

関 根:そうですね。昔は予算がすごい掛かるから、簡単に人にものをつくらせられなかったし、ショートフィルムをつくるっていう文化自体、あまりなかったですね。

小田上:でも、1本目であれがあの完成度でできるっていうのは、何か培ってたのか、もともと何かあったのか。
関 根:全然、分かんないです。僕、美大とか出てないし、そういう練習をしたわけでもなかったから。
小田上:できちゃった?

関 根:そうですね。どっちかって言うと、狙いがよかったのかもしれないですね。僕の場合はクロスカルチュラルみたいなことをすごいやりたいなと思ってたので。
海外の人たちって、日本でいい映像撮っていくじゃないですか。
映画『ロスト・イン・トランスレーション』とか、日本ではこういうのないよなっていうのを撮っていく。それが悔しかった。で、海外の人たちと日本の変なところについて話したときに、コンビニは気が狂ってるねみたいな。海外はコンビニがないから。あんな整然とした空間で、めっちゃものがきれいに並んでる感じってないから、かなり異常だよねって。

小田上:なるほど、そういうのがあったんだ。3人の話を総合するとやはり、脚本自体も良くなきゃいけないけれど、そのひとつ前に、それぞれの狙い、コンセプトがあったということなんだね。

関 根:ですね。あと、追いつめられてたっていうことは3人ともそうだと思うんですけど、今はこういうコンペとか氾濫してるから、逆に大変なのかなっていうのもありますね。アドフェストが登竜門としてすごい効果的かというと、昔よりも変わってきたような気がする。それがすごい難しいとこなんですよね。

小田上:特にここ4、5年、Remarkable を取ってきた人たちが、じゃあ、フリーになって、ビュッと業界の中で次々出てきてるかっていうとそうでもなくて、その辺、コンペ、取ればいいものではないっていうことはある。

山 口:そうですね。
関 根:毎年、毎年、やるから、それが、少し軽さにつながっちゃってるのかもしれません。重みがないっていうか。

小田上:何でもそうだけど、一般化すると、価値が下がるというか。逆にそういう若い人たちを、蹴落としていくぐらいのほうが、多分、ほんとはいいんだろうなと。

関 根:そうですよね。

#02 につづく

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