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2017.11.22 HAT viewer

無名だった僕らを変えた、あの一本はこうして生まれた #03

前回までのあらすじ

アドフェスト Fabulous 4 を受賞した、歴代 HAT 3人のディレクターによる座談会「無名だった僕らを変えた、あの1本はこうして生まれた」。
 
先日公開された座談会 #01では、2017年に Fabulous 4 のグランプリと観客賞を受賞した山口直哉監督の作品『The Dolls with Attitude』の試写からはじまり、2005年、2008年と同アドフェストでグランプリを受賞した関根光才監督、塩田悠地監督にも、当時の話を。
 
つづく座談会 #02では、それぞれの作品のコンセプト、オリジナリティについて、そしてディレクターとしての「その後」の話を伺いました。
 
最後となる「無名だった僕らを変えた、あの1本はこうして生まれた」#03 は、それぞれ3人のディレクターのそれぞれの立場からの想いと、ディレクターを目指す若いクリエイターたちへのメッセージを中心とした座談会です。
 

今回のインタビュー参加者プロフィール

 
山口 直哉
2012年 東京藝術大学美術学部卒業
2012年 HAT入社
2017年 アドフェスト Fabulous 4 受賞
 
塩田 悠地
2006年 愛知県立芸術大学・大学院デザイン科修了
2006年 HAT 入社
2008年 アドフェスト Fabulous 4 受賞
2017年 フリーランス(Tuxedo)
 
関根 光才
2000年 上智大学文学部哲学学科卒業
2001年 HAT 入社
2005年 アドフェスト Remarkable 5 受賞
2008年 フリーランス(GLASSLOFT)
 
※ 座長:小田上 洋光 / HAT 取締役ディレクター
 

① それぞれの立場からのメッセージ

小田上:最後に、こうやってアドフェストで賞取ったり、一線のディレクターを目指す人たちがいると思うので、そういう人たちに何か、それぞれの立場からどうぞ。
 
塩 田:僕が言えるのは、結構、シンプルで。もう、つくる。つくる以外、ないじゃないですか。コンテンツが面白ければ広がっていく可能性もあるし、つくるためのアクションを起こすっていうだけですね。
 
関 根:僕も、近いですけどね。どうしてもこの歳になってくると、弟子になりたいみたいなのが何人か来るんだけど、共通してんのは、この人に付いていけば監督になれるんじゃないかとを思ってる人が多い。でも本当に監督になる人たちって、そんなこと初めっから考えないし、自分で勝手につくっちゃう人のほうが監督になる。だから、情熱とか、モチベーションとかのほうが、大事なんだろうなと。それが本質かなと思うんですけど。
 
山 口:正直まだ分からないですね。僕、こっからなんで。いろんな正しいことがいっぱいある世の中ですけど、自分が一番正しいんだって気持ちで頑張ってくださいって感じですかね。
ほんとにみんな正しいこと言うんですよ。でも、その正しいことよりも、正しいことがあるんだと思ったんで。負けずに頑張るべきだっていうことですね、ぐらいにしか言えない。
 
小田上:正しいことより、信じることみたいなことですか?
山 口:いいですね。まとめてくださって。
小田上:自分の信じられることを信じよう。
山 口:そう、そうですね。それが一番。はい。
塩 田:じゃ、今の直哉が言ったって言おう。
山 口:そうっすね。
小田上:言ったていで。
山 口:言ったていで。
 

② 世代とクリエイティブ

関 根:ところで直哉くんは、今、何年目なんですか?
山 口:僕、5年目になりました。
関 根:あれ、塩田って、今、いくつだっけ?
塩 田:今、35で。会社にいたら、10年目とかじゃないですか。
関 根:そっか。そうですよね。
小田上:関根は今、幾つ? もう40ぐらい?
関 根:僕、41になりました。
小田上:直哉は?
山 口:28ですね。
関 根:あれ? ガミさん、今、おいくつですか?
小田上:先日、51歳にさせていただきました。
関 根:僕、入ったときには、ガミさんが自分ぐらいだったですよね。
小田上:ああ、もうそうだっけ? もう、10年前かぁ。
丁度もう、疲れてたころだなぁ。今だから言うけど、辞めようかなと思った時期だよ。
 
関 根:そうなんですか。
 
小田上:おれが30代のころは、割とCMのつくり方みたいなものが決まっちゃって、プロデューサーもパターン的にこなして利益を上げている時代だった。
師匠の世代の作品とかにくらべても、あまりにも何も面白くないし。このままやっててもなあと。
 
関 根:そうですよね。僕のときもあんまりCM、面白いってうのなんてほとんどなかったですね。
 
小田上:それで言うと、今でも実はあまりないんだよね。ちょっと揺さぶろうみたいなものはあるけど、ほんとに心底揺さぶられるかっていうとそうでもないし。我々が求めてるような表現のクオリティからすると、ね。
 

③ 作り手と受け手の変化

関 根:昔より揺さぶり方もビジュアル表現ばっかりになったと思って、アートディレクションが長けているものが多いですよね。精神的にガツンとくるやつはあんまりない感じがしますね。コピーライティングとかはもっと職業的には無くなってきちゃって、すごいこれはいいコピーだなとかいうのも、ここ最近、ずっと聞いたことない感じがします。
 
小田上:多様性じゃないけど、俺なんかがガキの頃には金持ちもいれば、ほんとに貧乏もいて、そういう意味じゃ、人生とか、生き方みたいなものだとか、価値観にすごいグラデーションがあったけど、割と今、豊かになって、ぼんやりとその平均点にみんな合わせて物事を考えるから、今更すごい底辺のことを言っても響かない人が多いとか、逆に、すごいバラ色のことを描いても響かないとか、そういう受け手側の変化もあるのかもしれない。
 
関 根:ちなみに、辞めるのはやめようかなって思ったのは、何だったんですか?
 

④ 世代を重ねて伝えられること

小田上:やめる要素を損得で挙げていくと、結局決められなくて。だから自分の気持ちに従うべきだなと思って、しばらく自分をほったらかすというか。

関 根:逆に?
 
田上:そう。だから、何か知んないけど現場に行くとね。自然にこうしたほうがいいよって考えたい自分があることに気が付いて、まだ何かやりたいんだろうなと、それで続けようかなって。
20代、30代、今50代になったけど、色々ものの見方が変わってくるから。そのときにこれじゃないかっていうものを、表面的にでも、本質的にでも探していけば。それを表現する技術は持ってるわけだから、周りからどう評価されようと何かはできるはず。あとは、お金が掛かるから、周りがそれを許すかっていうのは当然あるけど。 
スタッフ:制作部のほうから質問してもいいですか?
 

⑤ 若手作家を育てる環境

スタッフ:人を育てる環境が HAT にはあったみたいなことを外から見た人が言ってたりするんですが、皆さんの、HAT を巣立ったからこそ言えるような、そういう環境があったと思いますか?
 
関 根:あったんじゃないかなぁ。結果としては。僕の世代がもうちょっと若かった頃って、若手と上層部のセグメントの別れが強くて。
若手同士みんなわちゃわちゃ集まって、文句ばっかり言いながらやってる感じがあった。そういう反骨精神とか、それこそ負の力が実は結構、大事だった気がするんだけどもね。
 
小田上:なるほど、それはおれのときもそうだったなぁ。今は今で、何かあるでしょ?
 
山 口:若手ですか?
小田上:うん。抑圧された感じとかって。
山 口:抑圧されてて、、でもぐちとかあまり言わないですよ。
スタッフ:環境が良すぎると、独立心もなくなるかもしれないですね。
 
小田上:それが意外とそうでもないのよ。そもそも目標を高いところに置いてるから、そこからの反骨心とかも出てくるし、「ここに行きたいのに、なんだよ」っていうのはどんどん出てくるはずだから。結局は自分で何とかするしかないからね。
 
関 根:若手を育てる環境も、HAT には演出部としてはちゃんとありましたね。
逆に、会社の中に若手を育てる構造がないっていうのは、すごい怖いことだと思います。結局、誰が監督やんのっていうところで雑になっていくじゃないですか。じゃあ、おまえやればみたいな感じじゃ、やっぱできないでしょ、監督って。
 

⑥ さいごに

小田上:二極化だよね。システムでもうけるのか、コンテンツでもうけるのか。
どんどんいろんなメディアが出来てきて、CM、面白くないとか、テレビ離れとか言われるようになって、結局、コンテンツの質が重視されるようになってきて、そうすると、大手はシステムでもうけられるけど、うち以下ぐらいのところはクリエイティブを大事にしていかないとなかなか生き残れないんじゃないかっていう。今、そういうちょうど別れ道にいるのかなと。
 
関 根:チャンスと言えば、チャンスかなって気がしますけどね。
 
小田上:そうそう。だから、ここにいる3人が、10年後に広告とか映像のオピニオンリーダーになってる可能性もぜんぜんあるわけなんで。そうなったら、多分、逆に郵便物を送りつける立場になってる。
 
山 口:いやいや。
 
スタッフ:みなさま、そろそろお時間の方が…。この度はお忙しい中お集まりいただきありがとうございました。
 
小田上:これね、おれ、原稿まとめんだよね、多分。めんどくさ。
山 口:結構な、1時間ぐらい。
関 根:こんなの聞き直すの絶対、めんどくさいですよね。なんであいつらのみたいな。
小田上:いやいや、貴重貴重!こういう機会、初めてだもんね。
関 根:ありがとうございました。そうですね。確かに。濃密でしたよ、なかなか。酒でも飲まないと話さない、ねえ。
塩 田:酒飲まないで話すんだなと思って、びっくりした(笑)でも楽しかったです、ありがとうございました。
山 口:みなさん、ありがとうございました。
 

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